ここ数年、犬の「生食(ローフード)」が流行しています。「野生の犬は生肉を食べていたから自然だ」「消化が良く、歯石も付きにくい」「毛並みが良くなる」など、魅力的なメリットが語られる一方で、見逃せないリスクがあることをご存じでしょうか?
今回は、生肉にひそむ寄生虫や細菌による人獣共通感染症のリスクについて、獣医師による研究を参考にしながら解説します。

生肉にひそむトキソプラズマとは?
たとえば「トキソプラズマ」という寄生虫をご存じでしょうか?
これは生肉、特に豚肉や鹿肉などに含まれていることがあり、加熱不十分なまま摂取すると、犬も人も感染してしまう可能性があります。
多くの健康な大人は感染しても軽症で済む場合がありますが、妊婦さん・お年寄り・小さな子どもなど、免疫力が弱い人が感染すると、重大な健康被害につながる恐れがあります。
そして何より怖いのは、「犬から人へ」感染が広がること。犬自身が発症しない場合でも、排泄物や体表、口腔内に寄生虫や病原体を持ち込むことで、家庭内感染のリスクが高まるのです。
このようなリスクについては、獣医師による研究でも詳しく報告されています(※参考文献をご参照ください)。
ウイルス・細菌性の危険も
また、トキソプラズマだけでなく、
- O157(腸管出血性大腸菌)
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
- 鳥インフルエンザウイルス
など、さまざまな細菌やウイルスが生肉には潜んでいます。
これらが犬の口から家庭内に持ち込まれた場合、人の体内に入る経路は意外と多いのです。たとえばキス、顔をなめる、床や食器を介した接触など…。特に小さな子どもがいる家庭では要注意です。

生食にはエビデンスがある?それでも選ぶ理由になるか?
「生食の方が消化吸収が良い」「歯石がつきにくい」といった研究報告は確かにあります。ですが、それ以上に感染症のリスクの方が深刻で現実的です。犬は、体調は強靭な胃酸や体力がありますから、それほど大きな健康被害はないのでしょう。しかし、人との暮らしの中で社会に与える影響は大きいと思うのです。
健康のために始めた食事が、愛犬にも家族にも危険をもたらしてしまっては本末転倒ではないでしょうか。

まとめ:生食は“自然”でも“安全”ではない
「自然=安全」とは限りません。むしろ自然の中には、私たちの目に見えないリスクがたくさん潜んでいます。
犬の健康を考えるなら、生肉ではなく加熱調理された食事や、安全性が担保されたプレミアムドッグフードを選ぶというのも、大切な「予防ケア」のひとつです。
愛犬を守ることは、家族を守ることにもつながります。ぜひ今一度、フード選びを見直してみてくださいね。
参考文献
・岡田太一 他「ペット動物の生肉給与における微生物学的危害要因」日本ペット栄養学会誌(2021年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/12/1/12_32/_pdf/-char/ja 渡辺隆之著
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